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執筆者の写真根本 寛朗

資産配分から資産形成を考える(日米欧の比較)


最近のご相談で多い相談内容は、住宅購入時のライフプランシミュレーションや子供の教育資金についてだが、NISAやiDeCoなど将来に向けた資産形成や投資に関しての相談も増加している。

最近の株高で投資をはじめる人が増えているのは証券会社の新規口座開設数から見てもわかる。ただそれでも日本全体で見るとまだまだ家庭に占める投資金額は少ないしもっと多くすべきだと考える。今回は欧米から見た日本の金融資産の持ち方について考えていきたい。


日米英の金融資産推移と配分から投資の必要性を考える

上記の資料は2017年2月3日の金融庁説明資料からの抜粋である。少し古い資料ではあるが、各国の家計金融資産の推移(上図)である。1995年から2015年の20年間で米国は3.11倍、英国は2.27倍となっているの対し、日本は1.47倍と年を重ねるごとに差が広がっていることが見て取れる。やはり要因のひとつに資産構成があげられよう。

各国の家計金融資産の構成比(下図)を見みると、間接的な保有も含めた株式・投資信託の比率が日本は低い。日本の株式・投資信託の比率は英国よりも高いが、保険での間接保有が少ない。よく日本人は保険が好きと言われるが、金融資産としての保険保有比率は米国・英国の方が高い。米国・英国の保険はユニットリンク型保険(日本でいう変額保険)が主流で資産増加に寄与している。




2001年に日本政府が打ち出した「貯蓄から投資へ」のスローガン。


20年経つが下記の資料を見てみても一向に現預金の比率は変わらず欧米に比べて多いことがわかる。

私が普段、金融機関の人と接している中でも「投資」と「投機」の違いをを理解していない人がいるように感じる。積み立て投資の重要性やドルコスト平均法の効果を理解できていない人もいるし、知らない人すらいる。

これではなかなかこの「貯蓄から投資へ」変化することは難しい。

日経平均株価から見る積立投資の重要性

日本ではまとまったお金がないと投資できないし、値が上がるタイミングを予想し短期で利幅を狙う、ある意味ギャンブルのような投機が投資だと思っている人が多いと感じる。

金融機関はまとまった一時金で商品を販売し、何回も売買させ、顧客も短期で利幅を狙わせる。このこと自体が投資と投機を勘違いさせる。


それは日本の証券会社が仲介手数料ビジネスで、まとまった金額を短期で何回も取引してくれた方が会社は利益となるからである。

また、これまで日本では金融教育がされてこなかったことで、親が子へ誤った知識で「投機」を「投資」として教えてきたことも考えられる。


投資は、将来の収益(利益)を期待して、資金を支出すること。目先の利益しか捉えない投機ではく、将来の為に長期的な視点で行動していくことが大切である。


ここで、日本人の我々に馴染みのある日経平均株価を長期的視点で見ていきたい。


下記のグラフは日経平均を1990年1月4日から毎月1万円を月初に積み立てしたシミュレーションである。(※終値ベース、手数料や税は考慮していない。)

1989年12月29日に史上最高値(終値:38,915円87銭、取引時間中:38,957円44銭)を付けた年明けすぐ(翌営業日)から「よし!これからは日本株投資だ!」とはじめ、2021年4月までの31年4ヶ月(372ヶ月)の推移である。

要するに、一番高値からはじめてどう推移したかを見ていきたい。

ご存知の通り日経平均株価は未だ最高値を更新していない。一時金で投資していたらこれまで1円たりともプラスになっていないことになる。(※ただしドル建てベースは2021年1月13日に高値更新)


1990年1月(0ヶ月) 毎月1万円投資開始 

↓バブル崩壊

1996年1月(6年1ヶ月)73万円投資 +4,142円

↓アジア通貨危機

1998年10月(8年10ヶ月)106万円 ▲350,728円(▲33.09%)

2000年2月(10年2ヶ月)122万円 +12,599円

↓ドットコムバブル(ITバブル)崩壊

2003年5月(13年5ヶ月)161万円 ▲764,118円(▲52.54%)

2006年1月(16年1ヶ月)193万円 +122,746円

2007年2月(17年2か月)206万円 +277,150円(+13.45%)

↓グローバルファイナンシャルクライシス(リーマンショック)

2009年3月(19年3ヶ月)231万円 ▲1,197,034円(▲51.82%)

2013年5月(23年5か月)281万円 +10,847円

2021年1月(31年1か月)373万円 +3,781,347円プラス(+101.38%)




このように未だ最高値を更新できない日経平均株価だが、毎月積立をして投資していれば資産が2倍近くになっている。

やはり、長期的な視点で時間分散もできる積立投資を基本に資産を形成することがが重要である。特に若い世代は、老後資金準備を考える上では、退職までの時間もあるので積極的に投資性商品に資産を配分すべきである。


日本の金融教育は米英に比べ遅れているが、ようやく2022年度から高校の家庭科の授業で金融教育がはじまる。授業の中で「資産形成」の視点に触れるよう規定され株式や債券、投資信託など基本的な金融商品の特徴を教えることになる。


冒頭でも述べたように、最近資産形成や投資関連の相談は非常に増えている。

資産内容が投資性商品に多くを配分している人と、そうではない人では現在の日本の金利水準では将来の資産拡大の差が大きい。

日米英のような金融資産の推移の差は、今後20年、30年後、日本国内でも起こるのではないか。


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