「見えないものを見ようとして」が当然に求められる時代<後編>
前回をさっとおさらいしてみます。
「物価高」から「エネルギー問題」へと移り、そこに環境という側面が加わることで、より物価高に圧力が加わるということでした。
また、その事例の中から「今まで曖昧で済んでいたものが、明確に区分される」ことが加速していく。
こんな潮流をすくいあげてみました。この点には個人的な関心があり、それを今回のブログの論点に置いた。
という内容でした。
では、この動きは環境以外でも当てはまるのかを見てみたいのですが、
環境と同じようなレベルで、業界をまたいで重要視されているキーワードって、どんなものがあるでしょうか。
一つ、使える手がかりがあります。
それは『ESG』
お聞きになった方もいるのではないでしょうか。
これは、「環境、社会、企業統治」の3つの英語の頭文字を並べたものです。
なんと、20年の世界のESG投資残高は約35兆ドル(約4500兆円)にのぼります。
無視できないお金の量が関わっているテーマと言えます。
今では、「投資してもらう」「融資してもらう」「保険に入れてもらう」など様々な局面で、このESGを配慮していないことには、話が前に進みません。なぜなら、配慮の無いプロジェクトへ資金を拠出したりサービスを提供するような企業、とのレッテルを貼られてしまうためです。
どおりで、企業が「環境に配慮された」電気を使うわけです。
当然「環境」のEが大事なのですから、S「社会」もG「企業統治」も大事なのは言うまでもありません。
では、先ほど取り上げた「区別されていく」動きの中でのSやGってあるのでしょうか。
今回はSを一つ見てみます。
例えば、会計の世界では、今まで「表に出てこなかった」社員のスキルやモチベーションなどを数値化して開示するような動きが出てきています。
そういえば、
「次の項目を5段階で評価してください」
⚫︎最近眠れない
⚫︎業務中にムカッとする
⚫︎自分は人の意見を聞くほうだ
などなど。
多忙極まる中でPCに向かってこのような問いにチェックをするシーンを思い出してしまいました。
まさに「見える化」の実践だと思われます。
「人的資本」という考え方だそうで、確かにアップルやアマゾンなどの企業には革新的な発想を持つ有能な社員の方々が、企業価値向上のキーとなっています。
彼らに追いつき、追い越そうとする企業は、この点への着目をいっそう強めるでしょう。
「人件費」という括りではなく、資産としての社員。この解釈の裏返しは、「ウサギ飛び」の今と昔を彷彿とさせます。解釈が大転換するわけですから、そこに対してのアプローチも変化していきます。
確かに、立ち止まって考えてみると、「働き方改革」「労働生産性」「ジョブ型」などのワードが吹き荒れており、キャリアへの感覚の変化が著しいことにも気付かされます。
コロナ禍によって、個人の内省の機会が半強制的に作られたことも、これらの機運に拍車をかけているかもしれません。転職市場は活況で、人材関連会社も調子が良さそうです。
ところで、色分けされた人的資本に対して白黒付けただけで終わるでしょうか。
会計で見える化されたものは、株主の目に晒されます。
企業のお金は高水準で滞留していることもあり、黒い部分はIT化して効率を上げろ、と叫ぶかもしれません。
この部分をさらに掘り下げるのは、他の機会に預けるとして、
以上のように、必然のこととして「見える化」が進んでいる世界の中で、
私たちも、「目に見えていない」ことにもう少し意識的にならないといけないのかもしれません。
そんな気付きを得たところで、FPの視点に移して考えてみます。
今回取り上げたいのが「社会保険料」です。
社会保険料はメインの3つをおさえましょう。
それらは、
1:厚生年金
2:健康保険
3:介護保険(※40歳以上)
となります。
特にサラリーマンの方々は、これらが給料から天引きされており、無意識的になりがちだと思われます。
大いなる自戒も含めて、それぞれをもう少し詳しくみてみましょう。
給与だけで考えると、これらは
◉「標準報酬月額」×「保険料率」
の式に当てはまります。
まず、「標準報酬月額」については、
基本的には4~6月の給与の平均額を基にして、平均給与を間隔で区切った「等級」にあてはめ、各等級ごとに定められた金額を採用しています。なお、厚生年金と健康保険や介護保険では区分の数が異なります。
次に、「保険料率」ですが、
【厚生年金】
これらの保険料率は、2017年9月分からは「18.3%」で固定されています。
【健康保険】
例えば、中小企業が多い全国健康保険協会(協会けんぽ)では、都道府県ごとに料率が異なりますが、
全国平均では10%となっています。
40歳以上になると、ここに約2%の【介護保険】が足し合わさり、なんと合計で約30%
ただ、これらは労使折半。それでも個人負担は約15%となります。
もちろん、社会保険はいろんな局面で私たちを支えてくれる強い味方でもありますが、改めて見てみると、大きな割合です。
再認識するからこそ、対策が打てたり、大切にできたりするものです。
みなさんの周りでも、これから少しだけ意識的になれるものを探してみてください。
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